李俏玲
【要旨】:美化語の既往研究の文献が足りない故に、多くの日本語学習者は美化語に対する認識が不足である。本稿は日本語学習者の角度から、手元の資料を利用し、美化語について、自分なりの研究を行った。美化語の概念、美化語と他の敬語の区別について、さらに詳しくまとめて解説した。先ず、日本文化審議会に所属する国語分科会が発表した新「敬語の指針」に基づき、他の敬語の定義と比較し、美化語の概念を述べる。次は、用例分析を通し、美化語と尊敬語、謙譲語の区別を述べる。
【·キーワード】:美化語 概念 区別
1.はじめに
敬語は難しいと感じる人が多い、特に中国の日本語学習者にとって、敬語は日本語文法の最難部分だろう。2007年2月2日に、日本文化審議会に所属する国語分科会が「敬語の指針」を発表し、現代敬語の分類を元来の3種類から5種類へと分類した。即ち、それまでの「尊敬語·謙譲語·丁寧語」という現代敬語3分類から、今の「尊敬語·謙譲語·丁重語·丁寧語·美化語」という5分類へ変更した。そのうち、丁重語と美化語は新増分類として登場する。日本語言語學においては、美化語が敬語の一分類として提出するのは初めてではない。日本語言語学学者辻村敏樹や宮地裕、熊井浩子らが既に各自の著作にて、美化語を独立の一分類として提出した。
過去、美化語に関する既往研究は他の敬語ほど多くない。美化語の既往研究は美化語の定義を定めることが多い。宮地裕が1971年に、美化語を「話し手が自分のことばづかいの品位への配慮を表す敬語」①と述べ、2007年に、国語分科会が「敬語の指針」を通し、美化語の概念を「ものごとを美化して述べること」②と定めるなどである。しかし、美化語に対して、さらに詳しく認識することについての文献はあまりない。本稿は日本語学習者の角度から、美化語の概念を述べ、美化語と他の敬語を比較、区別し、特に美化語を分類することを通し、美化語をさらに詳しく明らかにする。
2.美化語の概念
美化語を認識するなら、まず美化語の概念を明確すべきだ。美化語は、敬語の「尊敬語·謙譲語·丁重語·丁寧語·美化語」という5分類の一つであり、従来の「尊敬語·謙譲語·丁寧語」という3分類の丁寧語から細分化された。2007年2月2日に、国語分科会が発表した「敬語の指針」にての説明によると、美化語は「ものごとを,美化して述べるもの」である。
敬語は文字通り見れば、「敬意を表す言葉」であり、話し手や聞き手の間の上下親疎関係に基づき、相手を尊敬する気持ちを表す語である。その代表は尊敬語、謙譲語、丁重語、丁寧語である。
例:
①「先生は事務所にいらっしゃいます」。
こちらの「いらっしゃいます」は尊敬語であり、聞き手の先生の位置を高め、先生に対して直接的に敬意を表す。
②「先生、お荷物をお持ちしましょう」。
こちらの「お持ちしましょう」は謙譲語であり、話し手自分が謙ることになり、話し手の自分の位置を低め、先生に対して間接的に敬意を表す。
③「先生の事務所に参ります」
こちらの「参ります」は丁重語であり、「行きます」と同じ意味だが、「行く」を使わずに「参る」を使うと、相手に対して丁重な言葉表現をしている。丁重語は聞き手が話し手よりも上位であることを表す③。
④「私は学生です」
「北京へ行きます」
「山田商社でございます」
こちらの「です」「行きます」「でございます」は丁寧語であり、相手に対して丁寧な気持ちを伝えている。丁寧語は話し手が聞き手を同等な位置に扱うことを示す。
しかし、上述した敬語が他人への敬意を表すのに対して、敬語に属した美化語は特別な存在である。相手との上下親疎関係や相手に対する尊敬気持ちへの配慮をせず、話し手自分自身の言葉づかいが上品かどうかへの配慮をしている。
例:
「いいお天気ですね」
「おいしいお寿司ですね」
こちらの「お天気」「お寿司」は誰かへの尊敬や謙遜でもなく、「天気」や「寿司」より、「お天気」「お寿司」のほうが上品の故に、話し手が自分のことばづかいをより上品に、より美しく図り、「天気」や「寿司」を「お天気」「お寿司」のように美化して述べることである。
上述したように、美化語は話し手が聞き手に上品な印象を与えるために、自分のことばづかいをより上品に、美しくする敬語表現である。
3、美化語と他の敬語の区別
美化語は言葉の前に「お」や「ご」を付ける場合が多い。例:
· いいお天気ですね。(美化語)
· 今日はお休みなんです。(美化語)
· お寿司が好きです。(美化語)
しかし、すべての「お」や「ご」を付ける言葉は美化語のわけではない。美化語だけではなく、他の敬語も「お」や「ご」を付けることがある。例:
·ご連絡、お待ちしておいります。(尊敬語)
·ご両親によろしくをお伝えください。(尊敬語)
·先生へのご説明。(謙譲語)
上記のように、「ご連絡」「ご両親」「ご説明」などの言葉の前にも「お」や「ご」が付いているが、美化語ではない。同様に言葉の前に「お」や「ご」が付いていることによって、多くの日本語学習者が、尊敬語や謙譲語を美化語と混同しやすい。次は、混同しないように、美化語と尊敬語や謙譲語の区別を分析する。
3-1 美化語と尊敬語の区別
敬語は話し手や聞き手の間の上下親疎関係に基づき、相手を尊敬する気持ちを表す語である。尊敬語は、相手或は第三者の位置を高め、相手或は第三者に対して直接的に敬意を表す言葉表現である。すなわち、相手或は第三者に関するすべてのものや動作に尊敬語を使う。例えば、相手或は第三者は自分の先生の場合、先生に関するすべてのものや動作に尊敬語を使う。
例:
①先生とのご面会、お待ちしておいります。
②先生のお事務所に参ります。
こちらの「ご面会」「お事務所」は自分より上位にある先生に関する物事ので、美化語ではなく、尊敬語である。
美化語は尊敬語のように、相手或は第三者に対して敬意を表すことではなく、単なる話し手自分のことばづかいを上品で美しくする。例:
③素敵なご面会ですね。
④好きなお事務所です。
上述のように、同じの「ご面会」「お事務所」だが、③④の「ご面会」「お事務所」は相手或は第三者に関する物事ではなく、相手或は第三者に対して敬意を表すことではない。単なる自分のことばづかいを上品で美しくしているため、こちらの「ご面会」「お事務所」は美化語である。
3-2 美化語と謙譲語の区別
謙譲語は話し手自身のことが謙り、自分の位置を低め、相手又は第三者に対して間接的に敬意を表す。例えば、先生に対する時、自分の位置を低め、自分に関する物事を謙譲語を使う。例:
① 先生にご説明を申し上げます。
② 先生にお礼に参ります。
こちらの「ご説明」「お詫び」は話し手自分自身が先生に対して行う行為の言葉であるために、美化語ではなく、謙譲語である。
美化語の場合は、相手又は第三者に対して間接的に敬意を表すことをしない。
例:
③ お長いご説明ですね。
④ このみかんをお礼にします。
同じ「ご説明」「お詫び」だが、①②の「ご説明」「お詫び」は先生に対して間接的に敬意を表すことによって、謙譲語であり、③④の「ご説明」「お詫び」は誰かに敬意を表すことではなく、自身のことばづかいが上品かどうかへの配慮をしていることによって、美化語である。
上述したように、美化語は尊敬語や謙譲語との区別は、話し手と相手の上下関係及びその関係に基づく尊敬や謙遜な気持ちを持つかどうかを決める。即ち、相手との上下親疎関係や相手に対する尊敬気持ちへの配慮をしていたら、尊敬語、謙譲語である。そのような配慮がない、話し手自分自身の言葉づかいが上品かどうかへの配慮をしていたら、美化語である。
4、まとめ
過去、美化語に関する既往研究は他の敬語ほど多くない故に、多くの日本語学習者が美化語に対する認識が足りない。本稿は手元の資料を利用し、美化語について、自分なりの研究を行った。美化語の概念、美化語と他の敬語の区別、美化語の考察から得られた結果は下記のとおりである。
(1) 美化語の概念については、美化語は敬語に屬したが、他の敬語表現と異なっている。上下親疎関係に基づき、相手を尊敬する気持ちを表す語ではない、話し手が聞き手に上品な印象を与えるために、物事を美化することを通し、自分のことばづかいをより上品に、美しくする敬語表現である。
(2) 美化語と尊敬語の区別については、相手或は第三者の位置を高め、相手或は第三者に関する物事に敬意を表す言葉表現は尊敬語である。それと異なり、相手或は第三者に関する物事に敬意を表すことではなく、単なる話し手自身のことばづかいを上品で美しくする言葉表現は美化語である。
美化語と謙譲語の区別については、話し手自身のことが謙り、自分の位置を低め、相手又は第三者に対して間接的に敬意を表す言葉表現は謙譲語である。相手又は第三者に対して間接的に敬意を表すことではなく、単なる話し手自身のことばづかいを上品で美しくする言葉表現は美化語である。
勿論、本稿は日本語学習者の筆者の自分なりの研究であり、自分の力不足によって、未明な点や不備なところが多い。今後、美化語についての研究文献をさらに多く出ることを期待している。
注:
①宮地裕.「文論」[M].明治書院.1971年.P35
②文化庁·文化審議会.「敬語の指針(答申)」[Z].文化審議会.2007年.P21-29
③ウィキペディア.「敬语」[OL].http://ja.wikipedia.org/wiki/敬語.2014-4-27引用
④ウィキペディア.「敬语」[OL].http://ja.wikipedia.org/wiki/敬語.2014-4-27引用
【参考文献】:
【1】 宮地裕.「文論」[M].明治書院.1971年.
【2】 文化庁·文化審議会.「敬語の指針(答申)」[Z].文化審議会.2007年.
【3】 刘金才.「学日语必读丛书:敬语」[M].大连出版社.1998年.
【4】 加藤彰彥,佐治圭三,森田良行.日本语概说[M].樱枫社.2001.
【5】 皮细庚.新编日语语法教程[M].上海外语教育出版社,2007.
【6】 国語学会編.「国語学大辞典」[M].東京堂出版.昭和57年.